京都雪稜クラブ - 若さ溢れるオールラウンドな活動 −京都岳連加入−
| 山行名 | 夏合宿 大白沢池集中 |
|---|---|
| メンバー | L:A木の(文)、S口、T村 |
| 期日 | 2007/8/16〜8/19 |
| 山域・ルート | 奥利根 |
| 山行形態 | 沢登り |
それは6月初めのある夜、京都駅近くのファミレスでT嶋さんから発せられた一言から始まった。「じゃあ、A木君がもう一隊のリーダーで。」
京都雪稜クラブに入会して3年半、参加できた山行は春合宿1回、正月合宿2回、沢登り2回。京都に来てからは「年に一度の山登り」と言っても過言ではない腑抜けた日々を送っていた。今年は会社に人員が増え何とか4連休が可能そう、初めて夏合宿に参加できるかもと打ち合わせに参加したら、それがいきなりリーダー?何の冗談ですかと耳を疑ったが、雪稜が誇る精鋭沢屋軍団は軍団として北又へ挑むとのこと。己の実力不足は弁えていたが、ここらで一つくらい会への貢献となる事をしても罰は当たらん筈と自分に言い聞かせ、引き受けることにした。
幸いにもSLは平日班として活動を共にしてくれるS口さんが務めてくれる。場所は奥利根、大白沢池で二隊合流を目指すプランになった。T嶋さんのHPで見たあの激しくも愉快な記録、2002年夏のリベンジを兼ねるらしい。僕にとっても好きな山域で、1999年に遡行した恋ノ岐で泊まり沢の魅力を知ったし、東京時代最後の山行・藪から目指し敗退した幻の大池こと白沢ノ池の近くでもある。こうして会としても個人としても魅力的な合宿計画が固まった。
同じく平日に動けるT村さんがこちらの隊に来てくれることになり、訓練山行を幾つか計画した。中でも台風4号の後に行った東の川では、激増した水流を前に予定日では下山できず、ルンゼの中でツェルトだけ被りビバークする羽目に陥ったが、困難な状況を共に乗り切った経験は合宿本番へ向け良き糧となるであろう(ってことにしておいて下さい。職場の皆様、あの時は本当に済みませんでした)。そんなこんなで日々は過ぎ、出発が目前に迫ってきた。
雪稜の合宿前はいつも不安で堪らなくなる。まあ原因は明確で、山から遠ざかり過ぎてること、これに尽きる。ならば今年は違う。生まれ変わったように山へ行けてるのだ。準備は万端、いざ出陣。どっからでもかかってこい!・・とはいかなかった。だって出発前日にクラックスへ誘う輩がいるんだもん。お陰で両腕は激しく筋肉痛。睡眠不足(これはまあカテイノジジョウ)。おまけにお日様マーク一色だった週間予報も、停滞前線の発生で怪しくなってきていた。 出発日が同じ北又組の見送りをと考えていたものの京都駅に着いたのは21:10、既に出発された後だった。流石に軍団と呼ばれるだけあって統制取れてますねえ。見送りに成功したS口さんと二人で皆を待つ。「あ〜、そういうもんじゃ隊」は時間通りにやってくるが我々にはT村さんがいる。いつも通り。メンバー間の相互理解が進んでいる事を確認したのち、お互いのスペアキーと温泉セットを相手に託し(ここで僕が鍵を失くしかけてたのは内緒だ)、スジコン忘れた!と悲鳴を上げるSLを宥めながら車に乗り込むT嶋さん達と別れた。 この夜は本当に蒸し暑く、何かバタバタして余り出発の感慨に耽る暇が無かったけれど、2日後には大白沢池で再会できる筈、それまでしばしのお別れです!・・と言ったものの、本当に合流できるかなあ。もんじゃ隊が大丈夫でもこちらがなあ。でもその場合はアサユウ沢の下降路で拾って貰えるよね。などとグダグダ考えてしまう。それでもシートを倒しているといつの間にか睡魔の訪問を受け、気付けばもう2時近く、京都から三県をすっ飛ばし富山まで来ていた。S口さんてば本当にタフ。有り難うここからは僕の番、高速を下りるまで頑張るよ。と大口叩いた舌の根も乾かぬ内に米山SAに逃げこむ。結局この1時間半を除いて全て運転して貰った。高速を下りる頃にはすっかり白んでいて、爽やかな青空の下R352を進む。途中で見える越駒の雄姿に上信越初体験のS口さんは車を停めて激写していた。
砂子平に着いたのは8時。結局仮眠時間ゼロ。関西からだとやはり遠い。ゆっくり準備してもんじゃ隊へのメッセージをフロントウィンドウに貼り付けた後、別荘のような建物の脇から只見川本流へ踏み入った。これが噂に聞く駕籠の渡しか。しっかり現役の模様で、早速乗り込んでみると滅茶楽しい。中州に下り立ち、後続の二人を水鉄砲で歓待してあげて、アサユウ沢右岸の道を歩き始めた。美しい原生林の中とてもしっかり踏まれているが、何せ良い天気、早く沢に入りたい!というわけで東大タツボ沢まで続いているらしいこの道とは速攻でおさらばし、入渓。河原ではあるが茶色く明るいナメも広がり、大田切の時にT村さんと話したキーワード「煌めき」満載の綺麗な渓相だった。魚止沢で一回目の休憩をし、先程の踏み後がここまで続いている事をもんじゃ隊の為に確認した。ほぼ徹夜のS口さんはいつもより体が重そうだったが、特に困難な箇所もなく、稜線や雪国らしいスラブの美しさにも目をやりながら楽しく進む。途中の滑り台ポイントではT村さんが滑走→潜水→浮上と一連の見事な演技を披露してくれた。 荒山沢出合には記録の通り快適なテン場があった。青いビニールシートまで置いてある。しかし時刻はまだ13時過ぎ、翌日の行程を考えるとここで泊まるのは下過ぎるので、クロウ沢出合より上を目指して遡行を続けた。地形図ではサルコバ沢と出合った後ゴルジュっぽくなってるように見えたが特にそんな事もなく、一ヶ所側壁から沢床に下りる為スリングを残置したが、概ね順調に進んだ。それでも時間はかかりクロウ沢出合に着いたのは16:40、ここには期待していたテン場は無かったが、その先の河原には素晴らしいお宿が待っていた。17:00行動終了、初日から良く頑張りました。薪はすぐに集まり、鋸で大工仕事に精を出しつつ焚き火を盛大に起こした。牛丼を腹いっぱい食べた後、花火を軽く楽しんで、真っ平らな砂地の上に張ったタープの下に潜り込んだ。服もカラカラに乾き切っていて、文字通り爆睡。
顔を蚊に刺され目が覚める。しかし恐れていた程には虫に悩まされなかった。焚き火はうまく熾きになっていてすぐ復活、野菜たっぷりの雑炊を食べて出発する。今日は初っ端から核心。すぐにキノクラ沢出合で、左に折れたアサユウ沢には見るからに手に負えない滝が架かっていた。さあどうする。選択肢は三つ、右から巻いて尾根まで突き上げるか、左から巻いて微妙なトラバースを経てこれまた大高巻きするか、小さく巻いて続くゴルジュを正面突破するか。記録を熟読するタイプのT村さんは右からの大高巻きで僕と同意見だったが、実力者S口さんは滝の先のゴルジュが見てみたいと言う。確かに水量は少ないし、今年は雪渓が残っているとも思えず、攻めるにはうってつけの条件下にある。そして我が隊には最終兵器なっちゃんも配備済みだ。 うーむ。迷ったが、今日はもんじゃ隊との合流日、何としても大白沢池まで辿り着かねばならない。という事でセイフティファースト、キノクラ沢を少し登ってから急峻な藪斜面に取り付いた。しかし全然セイフティではなく、足元が滑りまくる中、無理くりモンキークライム。藪は得意とほざいた過去には頬かむり、T村さんに先頭を代わってもらう。藪を巻いてる最中には陽が差す東の川以来のジンクスも健在で、汗だくになりながらようやく稜線に出た。ここから暫くは尾根の上を行こうと思っていたが、左を見ると傾斜は緩くなっており、偵察すると沢床も見え、下れると判断。下降し始めるとすぐに沢音が聞こえてくる。ああ早く戻りたいと気が急くが、この高さで聞こえるって事はきっと滝ではとT村さんに言われはっとする。うまく水音の上に出るよう心がけ、懸垂することなくドンピシャで滝の上に下り立った。丁度屈曲が始まる所、c1280辺りか。この先もゴルジュが続いているかも、と心配したのは杞憂で、赤茶けた花崗岩が綺麗な、穏やかな流れの中を遡行する。時折釜を持った滝も現れるが、ジンクス通り巻き終わりと同時に陽も翳っていて飛び込む気にはちょっとなれない。 c1365の二股はやはり左の方が水量が多いが、大白沢池に直接衝き上げる右俣に入った。しばらく行くと大きめの滝に出くわし(2段15m?)S口さんリードで直登。カムがしっかり効いているようで、いつもながらさくっと簡単そうに登らはる。正午が近付いた頃、12:30のシーバー交信を兼ねて、大休止を取った。スジコンのお昼ご飯が美味しい!この感動をもんじゃ隊に伝えたい(自慢したい)と思ったが、残念ながら繋がらなかった。まだお互い離れてるのかな。その間T村さんはまたまた滑り台を楽しんでらっしゃる。空はすっかり雲に覆われてるのに、ほんま元気どすなあ。最後の二股(c1500)を左に取ると源頭っぽくなってきて、等高線が詰み始める通り15m程の滝が出てきた。左から取り付き中段で流れの中を右に渡れば上部の傾斜は寝ている。シャワークライムは大好きなのでリードさせて貰った。水の冷たさに耐え横断成功、一安心しかけたものの上部は岩がボロボロで剥がれまくる。騙しのようなカム支点を取って何とか登り切れた(このカムはセカンドが登ってくる途中あっけなく外れていった)。まあ無事で何より。 シーバー交信は通じなかった場合1時間毎に試すことになっていて、三度目の正直で初めてシーバーが反応を示した。が、聞こえてくるのは雑音ばかりだ。とにかく「朝夕隊は大白沢池の近くまで来ており、もうすぐ着くと思う」と繰り返し喋ると、切り際にだけ「ハイ、ハーイ」とI野さんらしき声が聞こえた。この軽い感じからすると、もんじゃ隊はもう着いているのでは。あと一頑張りで彼等がコーヒーを沸かして出迎えてくれる筈。もはや降りだしていた雨も気にならない。沢は少し藪っぽくなってきたが、暫く行くととても緩やかな流れになり蛇行しだした。水の温度も今までと明らかに違って何だか生ぬるい。これはもう、約束の地は近い!視線を上げると上部にはそれらしき空間が広がっているではないか。足元がズブリズブリと沈み始めた頃、見えた、大白沢池だ!しかし下手すれば膝近くまであるぬかるみの中走り出すわけにもいかず、ゆっくりと近付いて行った。岸辺に上がり見渡すと、池は予想以上に大きく、こちら(北側)と対岸(南)に広がる草原には白い小さな花が咲き、ガスっているのもまた神秘さを演出している。静かで、本当に綺麗な場所だ。・・そう、静かだった。 期待していたコーヒーは、もとい、もんじゃ隊の姿は、なかった。取敢えず彼等が来る方向である南岸に移動することにする。東西面は樹林帯で、ここに入ると視界が利かず「今僕らが渡っている間、もんじゃ隊も向こう岸の藪を漕いでて、草原に出た瞬間お互いの姿を対岸に認め合う事になったら傑作だね」などと軽口を叩いたりした。南の草原の方がより平坦なようで、ザックを下ろして、さてテン場はどこにするべかと考えながら写真撮影に興じていると、突然人の声がした。どこからだ?あ、急斜面の藪の中に赤いメットが見えた!目を凝らせば白いのや青いのもある!それらは藪の中に隠れたり出たりを繰り返しながら急斜面をどんどん下ってくる。草原に下り立ち、やっとどれが誰だか確認できた、と思った瞬間I野さんがダッシュで向かってきた。成程これがチンネで鳴(泣)いたチン犬か〜ほんま犬っころみたいやな〜と眺めてたらこちらからもS口さんが駆けていく。ぶつかる様にして抱き合う二人の後ろから残る3人も近付いてきて、ああ、みんな元気そう。ついに、念願の合流を果たせたのだ。この感動を伝えるにはやはり水鉄砲の祝砲しかないっしょ♪と遠慮なく顔面めがけて歓待してあげた。 話したい事は一杯あったのだけれど、もんじゃ隊の4人は雨の中カッパも着ずに震えており、再会の余韻に耽る間もなく早速お宿設営に取り掛かった。全員でわいわいと囲む夕餉はとても楽しい。I野さん持参のライスペーパーで焼豚とか様々な具を包むオードブルでまずは空腹を宥め、もんじゃ隊の麻婆茄子丼を分けて貰って、T村さんによるドライカレーを頂く。どれも超美味しくて、幸せ。タープを叩く雨音にも負けず会話は弾む。お互いの2日間を報告し合って情報交換。もんじゃ隊からは「そっちは明日ほんま大変やで〜」と再三脅される。稜線上は猛烈に濃い藪で、今日のようにガスが出ると人間GPSの異名を取るH内さんですら現在地を掴めなくなるらしい。藪のスペシャリストからそう言われると、キノクラ沢出合からの高巻きで既に藪の自信を喪失していたのもあり不安が募ったが、T嶋隊長からあっさり解決策が示される。わーお、ウルトラC。雪稜の合宿初体験だった05GWの会津朝日でもその判断力には舌を巻かされた覚えがあるけど、やっぱ流石だなあ。これで明日以降の予定も定まり、安心して眠りに落ちた。(唯一の心残りは、この楽園では焚き火&花火が出来ないこと。今宵の為に昨日セーブしたのに。。)
雨足が時折強まるのを夢うつつで聞いた気がするが、目覚めると雨は上がっていた。しかし二対のタープの間で寝ざるを得なかったH内さんとS木君は、びしょびしょに濡れている。それでも暫くは起きてこなかったから、二人も良く眠れたのだろう。図太い・・いえ、タフな神経の持ち主だ。色んなポーズを付けて何枚も集合写真を撮った後、再び別れの時。次はお互い温泉でさっぱりした姿で会いましょう!もんじゃ隊の四人に見送られて、14時間前に彼等が下りてきた急斜面に突入する。大白沢山西肩の鞍部に上がる標高差50M足らずの間に、昨日のH内さん達の言葉が大袈裟でなかったと体で理解した。もうお腹一杯です。そそくさとウルトラCに取り掛かり、よってこれ以降の詳細は伏せさせていただく。 18時、時間切れぎりぎりまで行動し、今日も焚きが出来ないまま合宿最後の夜を過ごす。嗚呼、ボッカに終わってしまった哀れな花火たちよ。それでもT村さんによる美味しい麻婆春雨丼(最終日にして酢の物和えとかもう一品付いてる!)を平らげると明日への活力が湧いてくる。そう、明日は最終日、もう下山するだけなのだ。濡れた服とか虫とか関係ねー!(と自分に言い聞かせた。)
目を覚ますと3日振りの好天。青空の下出発する。滝が幾つか出てきたが、どれもクライムダウンできる範囲だ。そして約一時間後、楢俣川に出た。これでもう大丈夫だろう。あとはひたすら下って行けばよい。上々の天気の中、明るい本流をてくてく歩く。だんだん水量が増えてきて釜や小滝が現れ始めると、3人とも我先にと飛び込み、泳ぎ、滑り台をしまくる。SさんもTさんも顔がにやけっぱなし。心の底から楽しんではるのがありありと伝わってくる。こんなに沢好きの二人と一緒に4日間遡行できたんだと思うと、こちらまで幸せな気分になるなあ。 矢種沢出合でスジコンのお昼ご飯大休止を取って、狩小屋沢出合に着いてもまだまだ遊び足りないメンバーは林道に上がらず沢を降り続けたいと主張。T村さんが編み出した、川の流れに身を任せ戦法は隊全体に感染し、ぷかぷかたゆたいながらゆっくり下って行った。結局ヘイズル沢出合の橋まで沢に居続け、最後の名残ジャンプを決めてようやく上陸。林道歩きの準備を整える。良い天気だと濡れ物が速く乾いて嬉しい。タープは3人で持って歩く作戦で乾かす。楢俣湖の末端には割と早く着いたが、ここからがまだ長い。そこで僕だけ先行させて貰い、デポしてあるT嶋号を回収してゲートへ回すことにした。夏の陽射しの中を急ぎ足で進み、無事T嶋号を発見。林道ゲートへ運転して戻るとぴったしのタイミングで二人がやってきた。こうして長かった僕らの沢旅も遂に終わりを告げた。 あとはもんじゃ隊と再合流を果たすのみ。時刻はもう17時、きっと我々より早く下山している筈で、やきもきしてはるのでは。しかしここは圏外ゆえ、まずは身奇麗にする為湯の小屋温泉へと向かった。いかにも山あいの鄙びた湯治宿といった雰囲気で、最初に行った宿では日帰り入浴は断られたが、教えて貰った二軒目へ行くと、お風呂は一つしかなく男女交代で入ってくれと言われる。二人が先に入ってはる間にもんじゃ隊へ電話をしたら、何ともう水上の道の駅まで来ているとの事。ひえ〜心配させてしまって本当ごめんなさい!とても良い感じの湯屋で一時間ぐらいかけてのんびり味わいたかったが、そうも言ってられず大急ぎで風呂を済まし、ようやく道の駅に着いたのは19時。もんじゃ隊の4人は待ちくたびれた感じが有りつつも、遊び過ぎて遅くなったアホな僕らを満面の笑顔で迎えてくれた。再び車を入れ替え、京都へ向け長い帰路を行く。高速に乗ってすぐ、花火があがり(水上の花火大会だったらしい)フィナーレを飾ってくれた。
駕籠の渡し
いざ入渓
釜は泳いで
ハイポーズ
最初で最後の花火
キノクラ沢出合
S口リードの滝
陽が翳ってもまだ滑り台
A木リードの滝
着いた、約束の地!
感動の再会
噂の藪に突入
甲羅干し休憩
ピース
滑って泳いで降ってく